日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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カンゾウ属植物が生成するサポニンの化学的多様性起源
*澤井 学石森 雅人大山 清關 光須藤 浩明石 智義青木 俊夫村中 俊哉斉藤 和季
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p. 0250

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抄録
グリチルリチンはカンゾウ (Glycyrrhiza)属植物が地下部に蓄積するサポニンで,甘味料,医薬品として世界中で用いられている.最近,我々はG. uralensisより,グリチルリチン生合成に関わるシトクロムP450としてCYP88D6 [Seki H. et al. PNAS (2008)],CYP72Aの同定に成功し,遺伝子組換え酵母によるアグリコンの生産にも成功している.ところで,カンゾウ属にはグリチルリチンを産生せず,類似のサポニンを産生する種も存在する.本研究ではカンゾウ属植物が生成するサポニンの化学的多様性は,それら生合成に関わるP450遺伝子の差異によるものと考え,グリチルリチン産生種および非産生種より相同遺伝子を単離し,比較解析を行った.
CYP88D6相同遺伝子の推定アミノ酸配列を基に作成した分子系統樹では,グリチルリチン産生種と非産生種はそれぞれ別のグループに分かれた.また,酵母異種発現系を用いて相同遺伝子の機能評価を行ったところ,CYP88D6相同遺伝子の機能的差異がこれらの化学的多様性の原因であることを示唆する結果が得られた.今後,これら遺伝子情報を用いたカンゾウ属植物種の同定や合理的な分子育種が期待される.さらに,これら遺伝子が,合成生物学,植物代謝工学の手法にてサポニンを生産する際のプロファイルデザインツールとして活用されることが期待される.
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© 2011 日本植物生理学会
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