抄録
好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus vulcanus(57℃培養)から精製した光化学系II反応中心色素タンパク質複合体 (PSII) 2量体をナノメートルサイズの内径をもつ、シリカメソ多孔体SBA内部に吸着させ、シリカガラス内での光反応を実現した*。PSII 2量体は20nmの直径、70クロロフィル分子、756kDaの分子量をもつ。平均内径が23nmと15nmの2種のSBA23とSBA15に各々4.7mg と15mgのPSIIが吸着した。共焦点顕微鏡測定から、SBA23の内部と外側両方に, SBA15では外側のみにPSIIが吸着することが示された。PSII-SBA23共複合体は、溶液内のPSIIとほぼ同様の高い酸素発生活性を、室温間欠光照射(3min明6min暗)-フェイルパラベンゾキノン追加条件下で3時間以上、暗所40℃条件では2日以上にわたり示した。一方、PSII-SBA15の酸素発生比活性は低かった。これにより、シリカ細孔内に単分子的にとりこまれたPSIIが、水から電子を取り出し、酸素分子を放出し、フェニルパラベンゾキノン還元を安定、高能率に進め得ることが示された。この手法は人工光合成や光機能素子の新手法となりえる。異なる光反応性タンパク質複合体とシリカ細孔の組み合わせを議論する。
*Noji,T.ら Lungmuir (2010) 印刷中