抄録
植物の感染防御応答の最初期過程で、膜電位変化(Kuchitsu et al. 1993)と細胞膜を介したCa2+動員(Kurusu, Hamada et al.. 2010)が誘導されるが、哺乳動物に多種存在する膜電位依存性Ca2+チャネルの多くのホモログは植物に見出されておらず、Ca2+動員機構は謎に包まれている。膜電位センサードメインを持つ陽イオンチャネルtwo-pore channel (TPC)ファミリーは、動植物の双方に存在するが、機能は未知の点が多い。イネOsTPC1は、糸状菌由来のタンパク質性エリシターTvXにより誘導される培養細胞の感染防御応答の制御に関与する(Kurusu et al.. 2005) 。本研究では、感染防御応答初期に誘導されるCa2+動員にOsTPC1が関与する可能性を検証するため、野生型株やOsTPC1機能破壊株培養細胞の[Ca2+]cyt測定系を構築し、TvX等種々のエリシターにより誘導される[Ca2+]cyt変化を解析した。さらに、細胞膜、液胞膜を単離し、抗OsTPC1抗体を用いて、細胞内局在部位を詳細に解析した。これらの結果に基づき、OsTPC1の細胞内局在と生理機能を、シロイヌナズナなど他の植物種や動物と比較しながら議論する。