日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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光合成酸素発生反応におけるアンモニウムイオンの阻害効果
*津野 将弥鈴木 博行野口 巧
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p. 0468

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抄録
光合成酸素発生反応は、光化学系II蛋白質中のMnクラスターにおける水の酸化によって行われる。水分子の類似体であるアンモニアは、基質水分子と交換することによって酸素発生を阻害すると考えられてきたが、その阻害機構の詳細は明らかとされていない。そこで本研究では、NH4Cl添加による酸素発生阻害のpH依存性と、S1→S2遷移のフーリエ変換赤外 (FTIR)差スペクトルを測定することにより、酸素発生反応におけるアンモニア阻害の分子機構を調べた。ホウレンソウの光化学系II膜標品、及びPsbP,PsbQをあらかじめ除去した試料に100 mM のNH4Clを添加し、酸素発生活性をpH5.0-8.0の範囲で測定した結果、どちらの試料でもこのpH領域において約40%の活性低下が見られた。また、pH 6.5におけるS2/S1FTIR差スペクトルは、NH4Cl添加によって、カルボキシル基のCOO対称及び逆対称伸縮振動領域に大きな変化を示した。このシグナル強度のNH4Cl濃度依存性は、酸素発生阻害のNH4Cl濃度依存性とほぼ一致した。以上のことから、NH4Clによる阻害効果は、NH3ではなく、むしろNH4+によって起こることが示された。Mnクラスターのカルボキシル配位子、または水素結合ネットワークを形成するカルボキシル基へのNH4+の相互作用が、酸素発生反応の阻害を引き起こすと考えられる。
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© 2011 日本植物生理学会
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