日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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生物時計の組織特異的な機能分担
*遠藤 求Steve Kay荒木 崇
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p. 0473

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抄録
生物時計は、動物では睡眠やホルモン調節、植物では花成制御や葉の就眠運動などに重要な役割を果たしている。動物と植物の時計遺伝子に相同性は無いものの、(1)動植物の生物時計はフィードバックループ制御という共通した分子機構を持っていること、(2)花成や就眠運動の実現には、個々の細胞が持つリズムを個体レベルで統合する必要があること、(3)植物における組織特異的な機構は決して珍しい物ではないことなどから、植物にも動物で見られるような生物時計の組織特異的な機能分担があると考えられた。しかし、植物は脳に対応する明確な中枢を持たず、特定の組織を外科的な方法での切除が難しいことから、これまで生物時計を組織特異的に解析することは困難であった。
今回、シロイヌナズナの葉肉・維管束・表皮をそれぞれ短時間で単離し、様々な日長における各組織の時計遺伝子発現を調べた。その結果、TOC1やPRR3といった日長に応答して発現ピークを変化させる時計遺伝子の葉肉での発現パターンは個体全体で見たときと同じであった一方で、維管束での発現パターンは日長非依存を示し、少なくとも葉肉細胞と維管束の間では異なる発現制御機構が存在することが明らかとなった。さらに、こうした結果をより簡便に解析するために、スプリットルシフェラーゼを応用することで組織特異的な時計遺伝子発現を非侵襲的に測定する方法を新たに開発したので、併せて報告する。
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© 2011 日本植物生理学会
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