抄録
高等植物の器官形成に、オーキシン排出キャリアーPIN-FORMED1(PIN1)依存的なオーキシン極性輸送が重要な働きをする。PIN1の詳細な局在解析から、器官形成過程に、器官形成領域にPIN1極性が収束しオーキシンを集積する第一段階と、器官中央領域のPIN1極性が逆転しオーキシンを下部へと流し落とす第二段階が存在することが明らかとなっている。しかし、一連のPIN1極性を制御する分子機構は未だ解明されていない。そこで我々は、器官形成時のオーキシン極性輸送を制御する因子として同定されたNPH3様タンパク質MACCHI-BOU 4(MAB4)とその相同タンパク質MEL1およびMEL2に着目し、それらの機能解析を行った。まず、地上部の器官形成に重篤な異常を示すmab4 mel1 mel2三重変異体において、PIN1の局在を調べた。その結果、第二段階におけるPIN1の局在に異常が認められ、MAB4ファミリーがオーキシンのシンクとして機能するPIN1の局在を制御することが明らかとなった。また、第一段階から第二段階の移行にオーキシンの蓄積そしてシグナル伝達が関与すると考え、オーキシンシグナル伝達とMAB4ファミリー遺伝子の関係を調べた。その結果、MAB4ファミリー遺伝子がオーキシンシグナル伝達の下流に位置することが分かった。本発表では、これらの結果に基づき新たな器官形成モデルを提唱する。