抄録
近年、遺伝子発現パターンの似ている遺伝子群(共発現遺伝子群)を用いて遺伝子機能の推定を行い、遺伝子破壊実験等で機能同定を行うアプローチが一般化しつつある。我々はこのアプローチを支えるため、ATTED-II (http://atted.jp)を通じて、シロイヌナズナの共発現データを提供してきた。この共発現データは、多様な条件における遺伝子発現データを基に作成しており、そのため、多様な生命現象に関わる遺伝子を解析するのに適している。しかし、このような共発現データ(「条件非特異的」共発現データ)は、あらゆる実験条件の結果が「共発現強度」という1つの数値になってしまうため、実験条件による違いについて検討することは難しい。
この問題を解決するため、ATTED-II ver.6では5種類の「条件特異的」共発現データ(組織、非生物的ストレス、生物的ストレス、ホルモン、光)を提供している。これにより、リスト表示、ネットワーク表示ともに、今までの条件非特異的共発現データを、実験条件の観点からより深く理解することが可能になった。
また、このシロイヌナズナの共発現データは、ver.5.4から提供を始めたイネの共発現データと比較可能である。両種で保存されている共発現は被子植物全般に保存されていると期待でき、有用植物への応用が行いやすくなった。