日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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イワタバコ科植物の葉で生じる温度傷害の発生メカニズム
*角浜 憲明鈴木 祥弘郷 達明大西 美輪深城 英弘三村 徹郎
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p. 0562

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抄録
イワタバコ科の数種の植物では、冷水の灌水などにより葉温が急激に低下すると、葉が温度傷害を受けることがある。傷害を受けて変色した部分では、柵状組織の細胞が死ぬが、海綿状組織や表皮組織の細胞は変化しない。これまで我々は、イワタバコ科の一種セントポーリア(アフリカスミレ)を用いた研究から、温度傷害の初期に柵状組織の細胞内pHが変化することを明らかにしてきた。本研究では、セントポーリア以外のイワタバコ科植物(Columnea sp.の園芸種など数種)の葉においても、温度傷害に伴って柵状組織の細胞内pHが変化するかどうかを調べた。その結果、調査した全ての種において、柵状組織に特異的な細胞質基質pHの低下と液胞内pHの上昇が観察された。この結果から、液胞内容物の漏出や液胞膜の変化が示唆された。そこで、液胞に生じた変化をさらに検討するため、液胞膜を蛍光色素で可視化し、温度傷害に伴う液胞の動態を観察した。温度低下後、柵状組織の細胞では液胞の形態が大きく変化した。一方、海綿状組織と表皮組織の細胞では、液胞の構造変化は観察されなかった。これらの結果は、温度低下によって液胞膜が変化すると液胞内容物が漏出し、細胞内pHが変化することを示唆している。さらに、この傷害メカニズムが、イワタバコ科の系統分類群によらず共通していることも見出したので、それについても報告する。
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© 2011 日本植物生理学会
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