抄録
近年、遺伝子組換え生物の利用が拡大し、遺伝子組換え生物が環境に与える影響についての市民や科学者の関心も世界的に高まっている。我々は除草剤(グリホサート、グルホシネート)耐性をもつ遺伝子組換えセイヨウナタネ(除草剤耐性ナタネ、2n=38)の生育と近縁種(在来ナタネ、2n=20;カラシナ、2n=36)への遺伝子流動について、2003年以来継続的に調査している。その結果、主要なナタネ輸入港である国内の12の港湾(鹿島、千葉、横浜、清水、名古屋、四日市、堺泉北、神戸、宇野、水島、北九州および博多)の周辺地域のうち、横浜、堺泉北、宇野、北九州を除く8港湾の周辺地域で除草剤耐性ナタネの生育が確認された。そのうち四日市港周辺地域では、2005年以来4年連続して2種類の除草剤耐性を同時に持つナタネが確認された。このことから、2種類の除草剤耐性ナタネ間で交雑が起こっている可能性が考えられた。また、四日市港周辺地域の河川敷では、2008年に除草剤耐性セイヨウナタネと在来ナタネの雑種の可能性がある種子(2n=29)も見つかった。今後の調査にあたり、近縁種への遺伝子流動の可能性、およびこぼれ落ちた除草剤耐性ナタネの定着の可能性に留意すべきと考えられた。