日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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マイクロアレイによるタネツケバナ倍数体種の水分環境に応答した発現変化解析
*清水(稲継) 理恵寺田 愛花瀬々 潤清水 健太郎
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p. 0595

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抄録
生物はその歴史の中でゲノム倍数化を繰り返してきた.被子植物では,70%以上の種が過去に倍数化を経験していると見積もられている.倍数化による遺伝子の重複は,生物を多様化・複雑化するのに貢献したと考えられている.この研究では,植物の環境応答の進化に倍数化がどのように貢献したか,シロイヌナズナ近縁種を用いて検証する.
モデルとしてアブラナ科タネツケバナ属の3種を用いた.親の一種,Cardamine amaraは小川の岸辺などの水没した環境が主な生息地である.もう一種の親,C. hirsutaは,それとは対照的に開けた乾燥地に生息する.この二種からできた四倍体C. flexuosaは,雨が降ると水没するが晴天が続けば乾燥するというような中間的で変動する環境に生息する.この属では,同様の生息地の両親から倍数体種が生まれるというパターンが少なくとも10種以上,分子系統樹から見つかっており,倍数体種は二倍体親種と異なる環境への適応放散に貢献したと考えられる.
生息地の特徴から考えて,異質倍数体は2つの親種のゲノム発現パターンを環境に応じて使い分けているという仮説が考えられる.その検証のために,これら2種の二倍体種と異質倍数体種の,水没・乾燥それぞれの環境における遺伝子発現を,シロイヌナズナのマイクロアレイによって解析した.
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© 2011 日本植物生理学会
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