日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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植物の細胞死におけるATP動態の可視化
*初谷 紀幸今村 博臣野地 博行永井 健治
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p. 0608

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抄録
アデノシン三リン酸(ATP)の細胞内濃度は細胞のエネルギー状態の指標である。植物細胞に細胞死を誘導すると、時間とともに細胞内ATP濃度が低下することが知られており、細胞内ATP濃度の低下が細胞死実行因子の活性化に繋がるという説が提唱されているものの、単一細胞レベルにおける詳細は明らかにされていない。そこで本研究では我々が最近開発した蛍光タンパク質間FRETに基づく蛍光ATPセンサー(ATeam)を用いて、植物体の単一細胞内におけるATP動態を時空間階層を保ったまま可視化することを試みた。シロイヌナズナにATeamを発現させたところ、その蛍光シグナルは細胞質に局在し、細胞質内ではどの場所でもFRETに隔たりはなく、ATPは細胞質で均一に分布していることが明らかになった。次に、細胞死を起こす細胞のATP濃度の変化を調べるため、ATeamを発現するシロイヌナズナに植物病原細菌を接種し、タイムラプス蛍光イメージングを行った。その結果、細胞死を誘導しない病原性細菌を接種した場合、細胞内ATP濃度はほとんど変化しなかった。それに対し、細胞死を誘導する非病原性細菌を接種した場合は、細胞が細胞死特有の形態変化を示すのと前後して、細胞内ATP濃度が急激に低下しはじめることを見いだした。この結果はATP濃度の十分な低下が起こらないうちに細胞死が開始することを示している。
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© 2011 日本植物生理学会
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