日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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シロイヌナズナのATML1遺伝子は表皮特異的な遺伝子の発現を正に制御する
*高田 忍吉田 彩香
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p. 0611

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抄録
多細胞生物の発生では、さまざまな性質を持つ細胞が決まった配置で分化する。これらの細胞運命の決定には、転写因子による遺伝子発現制御が重要な役割を持つ。シロイヌナズナのホメオボックス遺伝子ATML1は、細胞運命が決まる以前の胚発生初期から最外層の細胞で発現する。ATML1を含む多くの表皮特異的遺伝子の転写制御領域にはATML1の結合配列(L1 box)が存在しており、ATML1による正の転写制御が示唆される。しかしながら、ATML1が実際にこれらの遺伝子の転写に十分であることは確かめられていない。本研究では、表皮特異的な遺伝子発現におけるATML1の役割を明らかにするために、ATML1の過剰発現実験をおこなった。転写抑制部位(SRDX)を付加したATML1を芽生えで構成的に発現させたところ、表皮特異的な遺伝子の発現が低下し、表皮細胞の形態が異常となった。また、ATML1を芽生えで構成的に発現させると、本来表皮で発現する遺伝子が葉原基の内層で異所的に発現した。これらのことはATML1が実際に表皮特異的な遺伝子の転写制御領域に作用し、発現を正に制御していることを示唆する。以上の結果をふまえ、表皮特異的な遺伝子発現を決める転写制御について議論したい。
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© 2011 日本植物生理学会
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