抄録
オーロラキナーゼは細胞分裂を制御するセリン・トレオニンキナーゼであり、生物種を超えて高度に保存されている。オーロラキナーゼは細胞分裂におけるチェックポイント制御、染色体分配、細胞質分裂などに関与していることが明らかになっている。特に、ヒト細胞における高発現はガンを誘発するため、そのキナーゼ阻害物質は有力な制癌剤候補である。我々はタバコ培養細胞を用いて、植物のオーロラキナーゼが染色体動原体領域に局在し、染色体動態を制御することを明らかにした。しかし、オーロラキナーゼの研究は動植物を通じて細胞レベルに集中しており、個体の分化・発生に関する知見は極めて少ない。そこで、シロイヌナズナ存在する3つのパラログのうち、染色体の動原体に局在するAtAUR3に注目してイメージング解析を実施した。動原体局在CenH3と共局在を示し植物個体においても分裂が活発な領域で発現が見出された。さらに、RNAiによりAtAUR3をノックダウンした植物体を作成して表現型解析を行った。AtAUR3ノックダウン個体において、地上部と地下部ともに成長阻害が見られ、細胞配列の異常や核内倍加現象の昂進が見られた。このノックダウン個体の表現型はオーロラキナーゼの阻害剤であるヘスペラジンを投与した際に見られる表現型とも一部一致していた。以上のことからオーロラキナーゼの植物発生・分化における役割を議論したい。