抄録
イネにはPHYA、PHYB、PHYCの3種類のフィトクロムが存在する。PHYAタンパク質は、緑化した植物では蓄積量が少ないため解析が難しいが、我々は、タンパク質の抽出法の改善により、イネ緑葉においてPHYAの免疫ブロット分析を行えるようにした。本研究では第5葉が完全展開したイネを用いて、PHYAの発現量を調べた。第5葉身のPHYAタンパク質蓄積量は、葉鞘にくらべ少なかった。第4、5葉身のPHYA蓄積量に差はなかったが、第5葉鞘に内包され光があまり照射されない第6葉身では、第4、5葉身よりも蓄積量が多かった。第5葉身・葉鞘でのPHYAタンパク質量は、明期に入ると減少し、明期の終わりから暗期の終わりにかけて徐々に増加した。このときのPHYA転写産物量は、葉身ではタンパク質量との相関がみられたが、葉鞘では相関が小さく、変化も小さかった。エンドウなどにおいて、PHYAの発現調節にPHYBが抑制的に働くことが報告されている。そこで、イネphyB、phyCおよびphyBphyC変異体を用いた解析を行った結果、PHYAの蓄積には、主にPHYB一部PHYCが抑制的に働くことが示唆された。このように、PHYAの蓄積量はダイナミックに変動するにもかかわらず、この時期のphyA変異体表現型は認められていないことから、緑葉におけるPHYAの働きをさらに研究する必要がある。