日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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高温ストレス下でのSynechocystis sp. PCC 6803におけるPsb28の機能に関する研究
*水澤 直樹酒田 慎也久保田 寿子桜井 勇和田 元
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p. 0687

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抄録
近年、私達はチラコイド膜を構成する脂質であるジガラクトシルジアシルグリセロールの合成能を欠損したSynechocystis sp. PCC 6803の変異株(dgdA株)から単離した光化学系II(PSII)では、二量体が減少して単量体が増加し、その単量体にはPsb28などのように二量体には存在しない蛋白質が蓄積することを報告した。このことは、Psb28がPSIIのアセンブリーに関与する可能性を示している。本研究ではPSIIにおけるPsb28の機能を明らかにするため、Synechocystis sp. PCC 6803を用いてpsb28破壊株やdgdA株との2重破壊株(psb28/dgdA株)を作製し、Psb28の欠損が高温や強光下での光合成特性に与える影響を解析した。psb28破壊株は通常の培養条件では野生株と同様の増殖を示したが、psb28/dgdA株は野生株やdgdA株に比べて増殖遅延を示した。38℃以上の強光条件下ではpsb28破壊株の増殖も野生株に比べ若干遅くなり、psb28/dgdA株の増殖遅延はさらに顕著になった。光合成光阻害の実験により、psb28破壊株は野生株に比べ光阻害を受けやすいことがわかった。以上の結果は、高温、脂質欠損等PSIIの光修復速度を通常より上昇させる必要のある条件で、Psb28はPSIIの修復サイクルに重要な役割を果たしている可能性を示唆している。
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© 2011 日本植物生理学会
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