抄録
トマトは受粉をきっかけに子房を肥大させ果実形成を開始させるが、このとき小花柄に形成されている離層では果実を維持する接着強化が行われる。一方受粉が成功しなかった花では離層組織由来の脱離が促進され、落花が誘導される。受粉が成功した花では離層の接着強化により肥大した果実が維持されるが、その後成熟しきったトマト果実では逆に簡単に落果が起こるように器官脱離プロセスが促進される。こういった果実成熟過程に特徴的な現象に伴う器官脱離は、細胞壁の合成や分解が大きく関わっていることが考えられるが、明らかにされていないことが多いのが現状である。そこで、本研究では落花・落果期の離層について細胞壁成分であるぺクチンとヘミセルロース特異的な組織化学染色および免疫染色を行うことで、器官脱離における細胞壁多糖の変化を明らかにすることを目的とした。落花・落果期前後の離層を含んだ小花柄の切片を作成し、それらをルテニウムレッドによるぺクチン組織染色および各細胞壁成分特異的なモノクローナル抗体を用いた免疫染色を行った結果、落花期の離層では受粉前の離層に比べてぺクチン性ガラクタン・アラビナンおよびキシログルカンが増加・蓄積していることが観察された。