日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-42
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一般演題 ポスター
エトポシドの反復投与による小腸 P-glycoprotein の発現増加機構における ERM タンパク質の関与
*小堀 宅郎原田 慎一中本 賀寿夫徳山 尚吾
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抄録
【目的】これまでに我々は,etoposide (ETP) の反復経口投与によって,RhoA/ROCK 経路の活性化を介し,小腸における P-glycoprotein (P-gp) の発現量ならびに薬物排出活性が増加することを報告している。しかしながら,ETP による RhoA/ROCK 経路の活性化が,小腸 P-gp の発現量を変動させる機序については未だ不明である。近年,ezrin/radixin/moesin (ERM) が,P-gp の細胞膜上での安定発現・機能制御において重要な役割を果たすことが報告されている。興味深いことに,RhoA が ERM の活性化機構を制御することならびに ROCK が ERM のリン酸化反応を担う主要なキナーゼであり,活性化した ERM をリン酸化することによって,その活性型状態の持続時間を延長することも知られている。そこで本研究では,ETP の反復経口投与による RhoA/ROCK を介した小腸 P-gp の細胞膜上での発現調節機構における ERM の関与について検討を行った。
【方法】4 週齢の ddY 系雄性マウスを用い,ETP (10 mg/kg/day, p.o.) は 7 日間反復投与した。また,RhoA 活性化の指標となる細胞膜移行を阻害する rosuvastatin および ROCK 活性を阻害する fasudil (いずれも 5 mg/kg/day, p.o.) は,ETP と同時に反復投与した。また,各タンパク質発現は western blot 法によって解析した。
【結果・考察】ETP の反復経口投与終了 24 時間後,小腸の細胞膜画分における ERM および phosphorylated ERM (p-ERM) の発現量は,ETP 未処置の対照群と比較して有意に増加した。一方,ETP による ERM または p-ERM の増加は,rosuvastatin または fasudil を併用投与することによって,それぞれ有意に抑制された。さらに,ETP による同画分における P-gp の発現増加は,いずれの阻害薬の併用投与によっても有意に抑制された。以上の結果から,ETP の反復経口投与による小腸における P-gp の発現増加機構には,RhoA/ROCK 経路を介した ERM の活性化ならびにそのリン酸化が関与することが示唆された。
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© 2013 日本毒性学会
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