抄録
私達は倍数化の影響を詳細に明らかにするため、シロイヌナズナの4系統、Columbia、Landsberg erecta、Wassilewskija、C24で人工倍数体系列を作出し、その根端成長について細胞レベルでの定量的な解析(動力学的解析)を行った。
2倍体と4倍体の根端成長を解析して比較した結果、どの系統でも4倍体の方が細胞体積が大きく、体積増大速度も高くなっていた。一方で、細胞増殖率については、どの系統においても2倍体と4倍数体との間に大きな差がなかった。このことから、4倍体化は細胞増殖にはあまり影響せずに、体積増大速度を高め、その結果として細胞体積の増大をもたらしたと考えられる。
Columbia系統については、より高次の倍数体(6倍体、8倍体)の解析も行った。6倍体は細胞体積、体積増大速度ともに4倍体を上回っており、成長の変化には2倍体から4倍体への倍数化の場合とある程度同じような傾向が見られた。8倍体になると成長はかえって鈍化したが、その程度は一様ではなく、6倍体より体積増大速度がやや低いものと非常に低いものの2群に分かれた。後者に由来する次世代個体がすべて4倍体であったことから、8倍体では倍数性が安定せず、染色体異常と関連して体積増大速度の著しい低下が起きている可能性が示唆された。