日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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ストレス応答における葉緑体由来の活性酸素種の生理作用
丸田 隆典中上 知野志 昌弘松田 峻尾尻 恵田内 葵薮田 行哲吉村 和也石川 孝博*重岡 成
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p. 0772

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抄録
葉緑体は植物細胞内における主要な活性酸素種(ROS)の生成部位であるため、酸化シグナリングの発信源であると考えられる。これまでに我々は、葉緑体で生成されたH2O2を介した酸化的シグナリングの生理作用を明らかにするために、チラコイド膜結合型アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(tAPX)発現の誘導抑制系を構築してきた。tAPXの誘導抑制により、葉緑体の酸化損傷の増大とともに、低温ストレスや病原菌応答に関与する遺伝子群の発現が変化することが分かった。そこで本研究では、葉緑体由来のH2O2のストレス耐性/応答に及ぼす影響を解析した。
tAPXの誘導抑制により、低温ストレスシグナリングに関与するいくつかの転写因子の発現が抑制された。また、tAPX発現を抑制させた植物は低温ストレスに高感受性を示した。一方、tAPXの誘導抑制により、病原菌応答性遺伝子群の誘導も認められたが、サリチル酸レベルの増加は見られなかった。よって、葉緑体由来の酸化的シグナリングは非生物的ストレス応答だけではなく、生物的ストレス応答にもサリチル酸非依存的に関与することが示唆された。現在、tAPXの誘導抑制のエリシター処理や病原菌への感受性に及ぼす影響を解析している。
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© 2011 日本植物生理学会
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