抄録
ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803のHik33は様々なストレス条件に応答し、遺伝子発現を制御するヒスチジンキナーゼである。しかし、そのシグナル検知の分子機構は未解明である。一般にヒスチジンキナーゼは、N末端側のシグナル検知ドメインと、C末端側のキナーゼドメインの2つのモジュールから構成されている。我々はHik33のシグナル検知ドメインの機能を解析するため、染色体上のリン酸欠乏応答性ヒスチジンキナーゼSphS遺伝子のシグナル検知ドメインに相当する領域をHik33のそれと置換してキメラ型のキナーゼをSynechocystis細胞内で発現させた。この株ではキメラキナーゼが活性化されると、アルカリフォスファターゼ(AP)の活性として検出できる。キメラキナーゼ発現株は、通常の培養条件下でAP活性を発現し、ストレス条件下ではその発現が低下した。Hik33のシグナル検知ドメインからPASドメインを欠失させるとAP活性が増大した。以上の結果から、PASドメインがセンサーの機能に重要であると考えられたので、PASドメイン中の保存された14残基に点変異を施したところ、2種の点変異株でキナーゼ活性の著しい減少が見られた。これらの結果から、Hik33のPASドメインはキナーゼ活性を適切なレベルに保つために必要であることが示唆された。