日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
会議情報

イネの転写因子WRKY45はモミラクトンA生合成遺伝子の発現をプライミングする
*赤城 文霜野 真幸高辻 博志
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0780

詳細
抄録
イネにおいて、抵抗性誘導剤ベンゾチアジアジール(BTH)は、サリチル酸シグナル伝達経路に作用して転写因子WRKY45を活性化し、病害抵抗性を誘導する。また、WRKY45過剰発現(WRKY45-ox)イネは、いもち病(M. grisea)や白葉枯病(X. oryzae)に対して強い抵抗性を示す。本研究では、WRKY45によって制御されている耐病性機構の解明を目的とし、WRKY45-oxイネおよびBTH処理後のイネでのいもち病菌感染過程における顕微鏡観察および遺伝子発現解析を行った。
WRKY45-oxイネに親和性いもち病菌を接種したところ、いもち病菌の貫入菌糸のイネ細胞壁への貫通の段階で侵入が強く阻止されていることがわかった。また、菌糸の侵入を許した部位ではHR細胞死をともなう抵抗性反応が観察された。マイクロアレイの結果、WRKY45-oxでは、ジテルペン型ファイトアレキシンであるモミラクトンAの生合成遺伝子等が、いもち病菌接種後に発現誘導されていた。また、非形質転換イネにおいて、モミラクトンA生合成遺伝子はBTH処理のみでは転写誘導されず、いもち病菌接種後にはじめて誘導されることがわかった。またこれらの遺伝子発現はWRKY45抑制イネでは見られなかった。これらの結果は、抵抗性誘導剤処理したイネにおいてWRKY45は防御遺伝子の発現をプライミングすることを示している。
著者関連情報
© 2011 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top