抄録
植物の光屈性は青色光受容後にIAA偏差分布がつくられることによって生じると提唱されてきた。シロイヌナズナでは青色光受容体であるphot1と光屈性シグナル伝達因子NPH3の光屈性への関与は明らかだが、光受容からIAA偏差分布形成までのシグナル伝達機構の詳細は不明だ。私たちはトウモロコシ幼葉鞘を用い光屈性に必要な部位に注目することより、光屈性シグナル伝達因子の解明を試みた。これまでの研究により、トウモロコシ幼葉鞘の光屈性には幼葉鞘先端0-2mmへの光照射が必須であること、また光照射後の内生IAA測定により先端0-3mm以内でIAA偏差分布が形成されることが明らかになった。またトランスクリプトーム解析の結果、幼葉鞘先端で多く発現している遺伝子中に、IAA輸送に関連すると考えられるNPH3-like 遺伝子とPGP-like 遺伝子を検出した。さらにq-PCRによりNPH3-、PGP-like 遺伝子発現量を先端から1mm毎に調べると、両遺伝子は先端0-1mm、0-2mmで極めて特徴的に強い発現を示すことが明らかになった。以上の結果より、NPH3-、PGP-like 遺伝子産物はトウモロコシ幼葉鞘先端における光受容とIAA横輸送の間でシグナル伝達因子として関与していることが示唆される。現在、これら遺伝子産物の組織・細胞内分布、相互作用するタンパク質の探索について研究を進めている。