日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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植物細胞における小胞体の凍結挙動と低温順化の影響
*小林 紫苑
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p. 0814

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抄録
温帯以北を起源とする植物の多くは、低温順化、すなわち、秋から冬にかけての気温低下あるいは日照変化を感知し、凍耐性を増大させる能力を有する。耐凍性の高い植物細胞では小胞体(ER)や細胞膜が特徴的な凍結挙動を示すことが報告されているが、凍結下での直接的な膜動態の観察が困難であることもあり、その生理作用は不明である。
カナダ・サスカチュワンでは冬期に-40℃を下回るにも関わらず、ネギは越冬する。このネギの葉鞘からは、顕微鏡観察に適した単一細胞層からなる表皮が簡便に採取できるため、この表皮およびER特異的蛍光試薬(ER-Tracker)を用いて凍結下でのER動態の観察を試みた。まず、低温未順化に比べ低温順化した細胞ではERが増加しているのが確認された。さらに、凍結下におけるERの凍結挙動を観察したところ、細胞周辺が凍結したと同時にフィラメント状の構造をしていたERが小胞状へと変化した。このERの小胞化は低温順化前後のどちらでも観察されたが、低温順化後の方が形成された小胞は大きかった。次に、融解時の挙動を観察したところ、低温未順化の細胞では小胞状構造のままであったのに対し、低温順化した細胞についてはフィラメント状の構造を再構築するのが確認された。このことから、ERの凍結挙動は耐凍性機構になんらかの影響を及ぼしていると考えられる。
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© 2011 日本植物生理学会
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