抄録
植物の低温応答シグナルでは,AP2/DREBファミリーに属するCリピート結合転写因子(CBF)の活性化が低温/乾燥ストレスに応答した遺伝子発現制御に関与していることが示されている.近年,シロイヌナズナを用いた分子遺伝学によりCBF遺伝子の発現調節にMYC様bHLH型転写因子ICE1 (Inducer of CBF Expression) とその翻訳後修飾が重要な働きをすることが報告された.イネでは必ずしも解明されていないことから,イネICE1ホモログの機能解明について着手した.RT-PCRによりイネのICE1ホモログの遺伝子を解析したところ,mRNAレベルでの発現量は一定であることを確認した. そこで,タンパク質レベルでの発現量の経時変化を解析するために,ICE1で保存された共通ペプチドモチーフを認識する抗-ICE1ペプチド抗体を作成した.この抗体を用いたイムノブロットよりイネ幼植物において低温に応答する約40kDaのICE様タンパク質が増加することが明らかとなった.以上のことから,イネの低温応答シグナルにおいてもICE-CBFカスケードが機能していることが示唆された.ICE-CBFの塩ストレスの応答についても合わせて報告する.