抄録
本研究では、ブラシノステロイド(BR)情報伝達機構の解明を目指し、BR生合成阻害剤Brz存在下での形態変化を指標として、Arabidopsisアクティベーションタギング変異ラインからBR情報伝達変異体bil 3 (Brz-insensitive-long hypocotyl 3)を選抜し、原因遺伝子の単離を行った。
bil3は暗所Brz存在下で野生株の約1.5倍の胚軸徒長が見られる半優性変異体である。明所下ではロゼット葉の細小化と花茎の短化を伴う細矮性Slender Dwarf様の形質を示し、成熟個体においては、野生株と比較して主花茎数が約1.3倍、枝数が約2.2倍、鞘数が約2.2倍に増加していた。BR受容体BRI1の欠損変異体であるbri1-5変異体にbil3変異体を掛け合わせた二重変異体においては、BR欠損による矮性形態から野生型形態に類した形態への回復が観察された為、BIL3タンパク質はBRI1の下流で機能していると考察した。BIL3promoter::GUS解析により、明所10日目の個体において葉脈、茎頂分裂組織、根で、成熟個体において維管束で発現が見られた。BRは細胞分化や維管束形成に関わる可能性が示唆されており、BRの機能発現にBIL3が関与する可能性について、現在更に詳細な解析を進めている。