抄録
遺伝子組換えによるスギの花成制御技術を開発するには、花成制御に関わる遺伝子を特定し、その役割を明らかにする必要がある。我々はスギ雄花に由来する完全長cDNAライブラリーから、12個のMADS-box遺伝子を単離し、6つのクレードに分類できることを明らかにした。6つのクレードに属する代表的なスギMADS-box遺伝子について、35Sプロモーター下流にcDNAを連結し、シロイヌナズナに導入し、6種類の遺伝子の機能を解析した。その結果、野生型より花成の促進が確認されたシロイヌナズナ組換え体は2系統あった。一つはAGL6クレードに属する遺伝子(CjAGL6)、もう一つはSOC1クレードに属する遺伝子(CjSOC1)を導入した組換え体であった。花成促進を示した組換えシロイヌナズナでは、導入したCjSOC1もしくはCjAGL6の発現量は極めて高かった。一方、導入遺伝子の発現量が低い組換え体では、花成の促進は観察されなかった。次に、スギ苗木にジベレリンによる花成誘導をおこない、そのときの遺伝子発現の経時変化を測定した。CjSOC1の発現はジベレリン処理の1週間、CjAGL6の発現はジベレリン処理後1ヶ月後にそれぞれ上昇した。以上の結果から、2種類の遺伝子がスギの花成に大きく関与していることが示唆された。