抄録
イネの主要なジテルペン型ファイトアレキシンであるモミラクトン類とファイトカサン類の生合成酵素遺伝子は、4番染色体と2番染色体においてそれぞれ遺伝子クラスターを形成している。我々はこれまでにキチンエリシター応答性bZIP型転写因子OsTGAP1がMEP経路遺伝子・モミラクトン生合成酵素遺伝子・ファイトカサン生合成酵素遺伝子の発現制御に関与することを報告した。本発表では、他のOsTGAP1の標的遺伝子の同定を目指してOsTGAP1過剰発現株培養細胞を用いたマイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイ解析の結果、エリシター処理0時間後においては1352遺伝子が、6時間後においては1539遺伝子が、24時間後においては1267遺伝子が野生型株と比較してOsTGAP1過剰発現株で発現量が2倍以上に上昇していた。これらの過剰発現株で発現が誘導されていた2268遺伝子について、階層的クラスタリング解析により発現パターンの分類を行った。ジテルペン型ファイトアレキシン生合成酵素遺伝子が含まれるcladeに注目したところ、このcladeに含まれるPR10遺伝子やchitinase遺伝子などがそれぞれ遺伝子クラスターを形成していることがわかった。現在、これらの遺伝子についてより詳細な発現解析を行っている。