抄録
二成分制御系(TCS)は植物に普遍的な情報伝達様式の一つである。植物TCSの代表例はサイトカイニン(CK)応答であり、CK受容体はHisキナーゼであることが知られている。これらの知見は主にシロイヌナズナで得られたものであるが、最近になりTCS研究の対象としてマメ科植物が注目されている。なぜならば、シロイヌナズナには見られないマメ科植物の特徴である根粒形成にCK受容体Hisキナーゼ(LHK1)が重要な役割を担っていることが分かったからである。我々は植物におけるTCSの普遍性と多様性を理解する一環としてミヤコグサを対象としてTCS関連遺伝子のゲノムワイド解析を行い、TCS因子群がモデルマメ科植物にもよく保存されていることを明らかにしつつある。例えば、(i)ミヤコグサのCK受容体型Hisキナーゼはシロイヌナズナ同様三種類(LHK1/2/3)存在すること、(ii)A型LjRRaのみならずLHK1やB型LjRRb2と名づけた転写因子が根でCKによる特異的転写誘導をうけることを見いだしている。これらを背景に、ミヤコグサTCS因子群の根粒形成における役割を、形質転換による毛状根形成を利用した逆遺伝学的手法を用いて解析している。これらの結果を、現在知られてるい根粒形成遺伝子発現ネットワークの中に位置づけて考察する。