抄録
カリウムイオン(K+)は、植物において、原形質構造や膜電位の維持、pHおよび浸透圧の調節に重要な役割を担っている。さらに、乾燥ストレス時には、孔辺細胞においてアブシシン酸(ABA)シグナル伝達により制御されたK+排出が膨圧調節を行い、気孔が閉鎖する。我々はシロイヌナズナのマイクロアレイ解析により、乾燥誘導性が示されたK+/H+交交換輸送体様遺伝子AtKEA5に着目し解析を行った。一価陽イオン/H+交換輸送体CPA(Cation Proton Antiporter)ファミリーに属するAtKEAファミリーは、シロイヌナズナでは6個の遺伝子(AtKEA1-AtKEA6)が存在した。AtKEAファミリ―遺伝子のストレス条件における発現様式をRT-PCRおよび定量的RT-PCRにより解析を行った結果、浸透圧ストレス時にAtKEA2およびAtKEA5の遺伝子発現が誘導されることが明らかになった。さらに、乾燥時の地上部と根における詳細な発現様式の解析を行ったところ、AtKEA5は根においてより強い誘導性を示した。またGFP-KEA5融合タンパク質はシロイヌナズナの細胞膜および細胞内膜系に局在した。現在、AtKEA5と共に相同性遺伝子AtKEA2、AtKEA4、AtKEA6の局在性および組織特異的発現の解析、およびこれら遺伝子の欠損変異体の解析を行っている。