日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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オイル産生藻類による低炭素社会実現への挑戦
*渡邉 信
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p. S0020

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抄録
藻類は陸上植物と比べて20倍~700倍のオイル量を生産する高い能力をもっている。藻類のオイル産生能力は種や培養株によって異なるが、主要な種では、乾燥重量あたり15-75%がオイル分で占められている。特に緑藻類Botryococcusは、炭化水素オイルを大量に産生し、細胞外に分泌する。ボトリオコッカスの培養株によってオイル産生能、増殖能がかなり異なるため、開発対象となる培養株としては、増殖とオイル産生のバランスがよく、CO2が溶け込みやすいアルカリに至適pHがあるものが選抜された。また、有機排水1~10%を含む培養液で弱光下でも良好な増殖を示す。このボトリオコッカスからのエネルギー生産システムをモデル化して、全プロセスにおけるエネルギー収支、コスト収支を算定したところ、獲得エネルギー量は消費エネルギーよりも多いが、オイルの生産コストは開放系で155円/Lとなり、閉鎖系フォトリアクターで培養すると800円/L以上となる。ボトリオコッカスのオイルを石油代替資源として市場で流通させるには、オイル生産効率を一桁アップする必要がある。
オイル生産効率が一桁アップに成功し、実用化された場合には、25万haの面積で日本における原油輸入量をまかなうことができるようになり、安定した経済基盤により支えられた低炭素社会が実現するはずである。
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© 2011 日本植物生理学会
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