抄録
本研究の目的は,統合保育の場面でのASD児の対人関係の発達における保育者・他児の役割や,ASD児・他児・保育者の3者間関係の変化を,一つの事例を通して明らかにすることである.3歳のASD児を対象に観察を行い,いくつかの場面における主要なエピソードを抽出し分析を行った.その結果,パターンの繰り返しによる介入や言語と行動を組み合わせた介入が対象児の発達を促していることが示された.また,対象児の初期の人間関係は保育士に依存したものであったが,保育士との関係が構築され安定化していくにつれ,他児との関わりが増加していた.以上の結果より,保育士が対象児と関わることにより,対象児と他児が関わる機会が生まれるとともに,対象児との関わり方を他児が学ぶことにもつながると考えられる.