抄録
成人するまでに,親との死別・両親の離婚・親との分離などの喪失体験,親の精神疾患・物質乱用・犯罪・暴力など親の不適応,身体的虐待・性的虐待・ネグレクトなどの逆境体験や,その他のトラウマとなるできごとを体験する人は少なくないことが判明している.これらの人たちは,医療・保健・福祉・教育・司法のみならず,一般行政サービスの場に現れることも多いと考えられるが,とりわけ,小児科や小児精神神経科領域は,早期発見・早期対応が可能な領域であるだけに,トラウマや逆境体験を常に念頭に置いた関わりが不可欠である.本稿では,トラウマの視点から治療やケアのあり方を再考した.