2021 年 61 巻 2 号 p. 137-145
児童虐待の予防および早期発見は,母子保健における喫緊の課題である.現在,筆者ら(保健師・心理師)は,子どもに育て難さがあり育児困難感を抱える幼児を持つ保護者を対象に,「前向き子育てプログラム(Positive Parenting Program;以下,プログラム)を実施している.今回,参加前後に同様の質問紙調査を実施し,効果検証を行った.これまでに実施した実施時期の異なる3グループの24名の結果では,「抑うつ」「ストレス」「過剰反応」は有意に低減していた.また,効果的なグループ運営について考察することを目的に事前面談(事前にプログラムの趣旨について丁寧な説明)を17名に行ったが,行っていない7名との比較においても「ストレス」と親が感じる子どもの行動「多動」で有意な改善効果がみられた.事前面談は顔を合わせてプログラムの趣旨を丁寧に説明することで参加者へ安心感を与え,参加の動機づけにつながることが示唆されている.特に,参加に消極的な「関心期」の段階にいる保護者には,事前面談を行うことで継続的な参加へのモチベーションが保持しやすくなったと考える.