抄録
本研究では,自閉スペクトラム症者が自己意識的感情である恥と罪悪感をどのように体験しているのかを明らかにする目的で9名の面接調査を行った.面接調査で得られたデータを分析し,8カテゴリー(「失敗の評価」,「失敗の認知」,「失敗の受け止め方」,「適応行動の獲得」,「記憶想起の特異性」,「罪悪感体験」,「恥/照れ体験」,「恥・罪悪感を抱く前提条件」)が生成された.各カテゴリー間の関係性の検討から,自閉スペクトラム症者は,恥と罪悪感に関しては失敗体験に直接付随する形で語られなかったこと,一方で記憶想起の特異性に関する問題が失敗体験に付随することが特徴であると考えられた.恥と罪悪感は,他者から褒められることに対する照れ(恥)や支援を受けることへの申し訳なさ(罪悪感)と関連して語られており,青年期の支援において自閉スペクトラム症者の自己意識的感情を視野に入れることが重要だと示唆された.