抄録
本研究は,重症心身障害児1名を対象として,音楽療法時に「ピアノ伴奏で歌いかけて,保育士が援助したツリーチャイムを児が握った左手で触る」または「児の左手に電子楽器サイミスのスイッチを保育士に握らせてもらい,ピアノ伴奏で歌いかけると,児が左手を約5 mm動かして鳴らす」の2条件のどちらをリラックスして鳴らすことができるのかについて心拍変動をもとに検討することを目的とした.音楽療法時における児の心拍変動を11か月間にわたり7回縦断的に測定・解析した結果,電子楽器サイミス使用時においてリラックスの度合いは高いことが示唆された.使用する楽器によって児の心拍変動に差を与える可能性が示唆され,心拍変動解析は児の個性を大切にしながら療育を行っていく手がかりになると思われる.