小児の精神と神経
Online ISSN : 2434-1339
Print ISSN : 0559-9040
脳科学的観点からいじめ当事者のナラティブを考える
虫明 元
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2024 年 64 巻 1 号 p. 36-41

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抄録
いじめは複数の当事者が関わる心身の痛みを伴う問題である.学童期はまだ成熟途上で心身のアンバランスになりやすい時期ともいえる.脳科学の観点からは人の前頭葉は発達が遅く青年期まで成熟に時間を要し,アタッチメントやメンタライゼーションも経験を通じて成熟するが,学童期は発達途上であり適切な経験がいじめ防止につながると考えられる.学校で行われるプレイバックシアターでは語りと演技によりいじめの現場でのさまざまな立場の当事者の視点が,演技をとおして経験として参加者の心や態度に変化を起こすと考えられる.その結果,当事者の語りは,他者や自分の心を見つめなおし,メンタライゼーションを通して,相手や自分の中の何かに気づき,考えるきっかけになると考えられる.ナラティブは語られるだけでなく,演じられるときに深い理解がもたらされる.脳科学の立場から,いじめ防止事業におけるプレイバックシアターの活動の意味を検討する.
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© 2024 一般社団法人日本小児精神神経学会
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