2021 年 37 巻 1 号 p. 11-17
小児の呼吸器疾患の原因疾患は気道感染症のみならず,先天性疾患やアレルギー疾患など,多岐に及ぶ.さらに,成長・発達に関連する因子が加わるため,同じ範疇の疾患であっても,年齢的な相違がみられる.年少児では気道感染症に罹患しやすく,解剖学的,呼吸生理学的な不利から呼吸器症状を起こしやすいことや肺機能検査ができないことから,診断に苦慮することも多い.一方,小児患者の保護者は,疾患に対する不安だけでなく,夜間の症状出現による保護者自身の睡眠障害などから,心身共に疲弊する傾向にある.このため,小児の患者では診断や治療効果判定に画像診断の比重が高い印象がある.胸部X線撮影は最も身近な画像診断法であるが,単純撮影であっても得られる情報は数多い.小児の呼吸器の特性,さらには,小児の呼吸器疾患の特性を理解すれば必要十分な情報を引き出し,早期の診断や有効な治療に結び付けることが可能である.