抄録
美術工芸品や石造仏などの文化財のコンター図を描画する際に, 実体視になり難い物分や, 写真に写っていない面を, あたかも, 等斉傾斜する斜面がそこにあるかのように, 等間隔のコンターを描画していることが, 時々見られる。奈良国立文化財研究所では, この現象のことを「イトー現象」と呼んでいる。
「イトー現象」が発生しているところは, 本来描画不可能な部分であるが, オペレーターは, 無意識のうちに形の恒常性とか, 補完作用のような心理学上で説明される動作を行って, 等間隔のコンターを描いてしまうのである。
「イトー現象」の発生は, カメラ位置, 図化対象と背景のコントラスト等に影響されるので, 撮影の際それらを考慮すれば, 防ぐことが出来る。