抄録
コーナー・リフレクタは, 十分に広い平坦な空地に置ければ, 反射点の位置が理論的に分かっている上に, 設置前後の画像をくらべることで検出同定が容易など, SAR画像の地上基準点として利用する上で, 優れた性質を持っている。しかし, 実利用では, 応用上必要な地点が広い平坦な空地でない場合の方が多い。その地点に最も近い平坦な空地を選んでも, 広さが足りないとか, 周囲の条件で必ずしもSAR画像上で設置したコーナー・リフレクタを検出できるとはかぎらない。本研究では, JERS-1 SARのための地上基準点として設置した既存の孤立コーナー・リフレクタについて, 観測回数, 設置サイト周辺領域の検出性, 設置サイトのシングルルックの画像からの検出性, 隣接する紛らわしい点ターゲットの有無などの関係を調べ, どのような空地を設置サイトとして選択すればよいか検討した。さらに, 同じコーナー・リフレクタがオフナディア角の比較的近いCバンドのERS-2 SARの地上基準点として利用できるかどうかについても検討した。その結果, JERS-1 SAR, ERS-2 SARのいずれの場合も, シングルルックのJERS-1 SAR画像上で近傍の目立った特徴などから設置サイトの位置をかなり精度よく推定できることが, コーナー・リフレクタを容易に検出同定する上で最も重要であることが分かった。設置サイトはあまり広い必要はなく, 隣接する領域が畑, 水田, 茶畑, 水域, 草地, 運動場などJERS-1 SAR画像上で暗く現れる場合はそれらも含めて, 10×10画素程度 (地上面での広さに換算すると, レンジ方向に150m, アジマス方向に数十m程度) の広さがあれば, シングルルックのJERS-1 SAR画像から十分に検出できることが分かった。