抄録
金星電離圏を特徴付ける大きな要因のひとつは固有磁場を持っていないことであろう。そのため固有磁場を持っている地球とは異なり、電離圏は太陽風と直接相互作用をする。その直接相互作用によって引き起こされていると考えられている現象の一つに、電離圏プラズマが局所的に枯渇するホールと呼ばれる現象がある。ホール中心では磁場の強度が強くなるという特徴があることことが知られている。しかしそこで観測される磁力線が金星のどこにつながっているかは詳しくは分かっていない。ホールだけではなく、金星電離圏で観測される磁力線がどのような条件の下、どこに、どのように巻きついているのかも詳しく調べられていないのが現状である。
本講演では、電離圏において、太陽風圧、磁場強度による磁力線巻きつきの違いを調べる。また、電離圏プラズマの運動が磁力線巻きつきに与える影響を考察する。
その結果、ホールで観測されるような強い磁場と弱い磁場において巻きつき方に違いは見られず、動圧の強弱の違いに対しても巻きつき方は大きな違いは見られないことが分かった。また、磁場巻きつきに電離圏プラズマの運動の影響と思われる非対称性が観測された。この特徴はホールが観測された磁場で見られる特徴と似ているため、ホールで観測される磁場もホール以外の電離圏で観測される磁場と同様に巻きついていると推測される。