抄録
微惑星形成のモデルには2つの相反するモデルがある。1つはダスト層の重力不安定によるモデルであり、もう1つはダストの相互付着によるモデルである。星雲が層流であれば、ダストが中心面に沈殿するにつれて中心面付近のダスト密度が増加する。ダスト密度が臨界密度を超えると重力的に不安定になりダスト層は分裂して微惑星が形成される。しかしながら、太陽系以外の原始惑星系円盤における中心星へのガス降着の観測から、星雲は全体的に乱流状態にあるという考え方をする人もいる。また、たとえ全体的に乱流状態でなくてもダストの沈殿にともなってシアー不安定により乱流が発生するという考え方もある。これによりダストは中心面に沈殿せず、ダスト密度は臨界密度を超えないので、ダストの相互付着によって微惑星が形成されたと近年は考えられてきた。しかしながら、ダストが微少ダストの集積によって成長していくと考えたとき、ダストの成長できるサイズに上限があることが示された(Sekiya and Takeda 2003)。以上のように、原始惑星系円盤における微惑星形成のメカニズムは、まだ解明されていない。それゆえにどちらのモデルにおいても、より詳細な研究が必要とされる。 われわれは、リチャードソン数が一定のダスト密度分布(Sekiya 1998)における重力不安定の臨界密度を数値計算により求めた。数値計算において以下の仮定がなされる。(1)ダストとガスの速度差を無視する、つまりダストサイズが十分に小さい($\le$ 1mm)ときに限定した1流体近似を用いる。(2)ガスは非圧縮である。(3)ガスの流れは円盤の回転軸に対して軸対称である。 中心面における臨界密度は、中心面からの距離に対して一様な密度分布(Sekiya 1983)のときよりも2.85倍大きくなることがわかった。われわれの結果から、重力不安定による微惑星形成に新しい制約条件が与えられ、その臨界密度を厳密に議論する場合には中心面からの距離についてのダスト密度分布を考慮する必要性が示された。