日本惑星科学会秋季講演会予稿集
日本惑星科学会2003年秋季講演会予稿集
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ポスターセッション2 10/9(木)13:30~14:45
模擬タイタン型気体からの有機物の生成に関する研究
*古池 敏行金子 竹男小林 憲正宮川 伸高野 淑識
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p. 65

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抄録

土星最大の衛星であるタイタンは、濃い大気を有する唯一の衛星として圏外生物学の観点から非常に興味深い太陽系天体である。1980年にボイジャー1号によって大気成分が観測され、その主成分が窒素であり、また副成分としてメタンが存在していることがわかった。大気中には様々な炭化水素やニトリルに加え、tholinとよばれる複雑な有機物からなるミストの存在が知られている。これらの観測結果よりタイタンは生命の起源に到る化学進化を探る上で重要であると考えられている。
これまで、CH4-N2からなる模擬タイタン大気中での化学反応のシミュレーションが様々な観点から行われてきたが,多くは紫外線をエネルギーとしたものであった。本研究ではCH4 (1%)-N2 (99%) 混合ガスへの陽子線、γ線、紫外線の照射や火花放電を行い,エネルギーの違いにより生成物の違いを調べた。また,タイタンに彗星から水が供給された場合に,アミノ酸などの生体関連有機物が生成する可能性も検証した。
放電では不飽和炭化水素が主に生成するのに対し,陽子線照射では飽和炭化水素が主生成物であること,紫外線では含窒素有機物が生成しにくいことが示された。このことは,タイタン中での化学進化が紫外線や放電単独では説明しにくいことを示す。また、器壁に付着した有機物を加水分解するとアミノ酸の生成が認められた。
陽子線照射生成物をキューリーポイント型熱分解GC-MSで分析すると,アルキルアミド化合物,窒素複素環化合物のほかナフタレン・フェナントレンなどの二環式/三環式芳香族化合物も検出された。これらの結果を2005年のCassini-Huygensの結果と比較し,タイタンにおける化学進化のエネルギーの推定を行っていく予定である。

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© 2003 日本惑星科学会
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