日本惑星科学会秋季講演会予稿集
日本惑星科学会2003年秋季講演会予稿集
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オーラルセッション5 10/10(金)9:15~10:30
L6コンドライトY75102の拡散反射スペクトルにおける粒子サイズ依存性
*北里 宏平安部 正真中村 昭子齋藤 潤藤原 顕
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p. 74

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抄録
地球に落下する多くの隕石は小惑星起源であると考えられているが、地上からの小惑星分光観測と実験室での隕石サンプルの反射スペクトル特性は単純に一致しないことがわかっている。それは、地球への落下頻度の最も高い普通コンドライトの反射スペクトル特性が、小惑星には圧倒的に少数派のQタイプに近く、最も多数派のSタイプ小惑星に対応する隕石がほとんど発見されていないことなどからも示唆される。これは微小隕石や太陽風などによる宇宙風化作用により、小惑星の表面物質が変化しているためであると現在考えられている。この宇宙風化作用は、Apolloサンプルの月レゴリスの研究から、レゴリスの粒子表面近くにナノメートルサイズの還元的な鉄粒子のコーティングが形成され、その結果アルベドの低下やスペクトルの赤化、吸収帯の平坦化などの影響を与えるということが知られている。
これまで観測と実験室のデータの比較から小惑星表面物質の推定を行なうために、小惑星レゴリス表面の散乱光角度依存性などの実験が多く行なわれ、詳細な情報が得られてきているが、近年探査機による観測から、さらに小惑星表面の多くの情報を知ることが期待されている。本研究では、レゴリスの粒子サイズが反射スペクトルに与える影響について定量的に議論するために、隕石を岩石破片の状態から細かく粉砕させていく過程の反射スペクトルを測定した。測定は、あまり地球での風化を受けていないL6コンドライトY75102を使用し、300nmから2600nmの紫外-可視-近赤外の波長領域で行なった。また、コンドライトの主要造岩鉱物であるカンラン石と輝石の可視・近赤外波長域の吸収帯から、粒子をサイズ分別する際に起こると予想される鉱物種の選択的分別効果についても考察を行なう。
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© 2003 日本惑星科学会
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