日本惑星科学会秋季講演会予稿集
日本惑星科学会2003年秋季講演会予稿集
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ポスターセッション2 10/9(木)13:30~14:45
HED母天体における高シリカガラス包有物形成の衝突起源可能性
*北里 宏平矢野 創矢守 章黒澤 正紀藤原 顕
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p. 73

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抄録
ガラス包有物は結晶質の鉱物中に含まれる通常数μ-数10μ程度の大きさの微小な不純物成分で、地球上の固体物質から他天体起源の隕石物質中にまで普遍的に存在する。本研究ではまず、酸素同位体組成などから同一の母天体起源とされるHowardite-Eucrite-Diogenite(HED隕石)中に含まれるガラス包有物の組織と組成の記載を行なった。主成分組成分析にはEPMAを用い、微量元素組成分析にはLAM-ICP-MSを使用した。その分析結果、今回使用した試料、Dhofar007(ハンレイ岩ユークライト)、Johnstown、Tatahouine(ダイオジェナイト)中のガラス包有物は著しくシリカ成分に富み、不適合元素に比較的乏しいことが明らかとされた。このような著しくシリカ成分に富んだガラス包有物は、地球のマントル物質や火星隕石、月サンプル中にも見つけられているが、マグネシウムに富むフェーズで、しかも水のない環境でどのようにして酸性のメルトが形成されるのかという問題については現在も議論中である。また、今回のガラス包有物は二次包有物であり、トロイライトやクロマイトなどの娘結晶を析出していた。
これらの結果は、ガラス包有物の元となるメルトが極度に低い部分溶融度での部分溶融ではなく、衝突作用によると考えられる斜方輝石の非調和溶融によって形成されたことを示唆しているかもしれない。そこで本研究では、HED母天体での衝突変成作用を模擬して、単結晶試料エンスタタイトの衝撃圧縮実験を行なった。実験では、試料をSUSのホルダーでパッキングして、ポリカーボネイトのプロジェクタイルを6.7km/secの速度でホルダーに衝突させた。その結果得られたエンスタタイトの顕微鏡観察から、高シリカガラス包有物形成の衝突起源性について考察を行なう。
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© 2003 日本惑星科学会
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