抄録
これまでに系外惑星は100個以上発見され、その質量や軌道分布が統計的意味を持つようになってきている。惑星形成理論モデルと組み合わせることにより、その観測された分布から系外惑星の形成過程の情報を引き出せるようになってきている。これはHR図から恒星進化の様子を読みとれるということと同じである。 本研究では、系外惑星の質量・軌道半径分布を理論的に推定し、観測と比べる。ここでは、系外巨大ガス惑星が固体コア集積後の原始惑星系円盤ガス流入でできたという立場にたち、コアの集積率、コアの孤立質量、円盤ガス流入率、円盤ガス流入の限界、惑星-円盤重力相互作用による巨大惑星の移動を、N体シミュレーションなど理論計算 (e.g., Kokubo & Ida 2002; Ikoma et al. 2000; Lin & Papalouzou 2000)の結果をもとに、それぞれモデル化した。そして、観測 (e.g.,Beckwith & Sarget 1996) から推定される円盤質量の頻度分布、円盤散逸時間のもと、惑星成長のモンテ・カルロ計算を行ない、系外惑星の質量・軌道半径分布を推定した。 われわれの理論モデルは、中質量(10-100地球質量)の系外惑星が0.1-3AUの軌道半径において欠乏することを示す。これをわれわれは ``Planet Desert''と呼ぶ。これまでの系外惑星の観測はこの ``Planet Desert''の存在を示し始めている。このことは、系外巨大ガス惑星が、キャメロン・モデル的なガス円盤の分裂でできたのではなく、京都モデル的なコア集積+円盤ガス流入で形成されたことを示唆する。さらに、われわれのモデル``Planet Desert''の境界線が、コア集積開始質量、円盤の散逸時間やコア集積時間、巨大惑星の移動時間の兼ね合いで決まることを示す。今後のさらなる系外惑星の観測により、これらの惑星形成の各プロセスに強い制約条件を与えることができる。