日本惑星科学会秋季講演会予稿集
日本惑星科学会2003年秋季講演会予稿集
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オーラルセッション9 10/10(金)16:30~17:30
炭素循環による環境安定化の惑星サイズ依存性
*渡辺 周吾阿部 豊
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p. 97

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抄録
  系外惑星の環境進化を考える上で生物が生存可能な惑星というのはひとつの指標となる。生物が生存可能であるための条件として地表に水が安定に存在できること、そして地表温度及び大気温度が適切な温度で安定していることがある。Tajika and Matsui(1990)(1)は炭素循環によって太陽進化に伴う放射増に対して地表温度の安定性が生じることを示した。またKasting et al.(1993)(2)は太陽の増光を考えた上で水が安定に存在できる惑星軌道半径を求めた。
  大気温度は入射エネルギー流量と大気中の温室効果とによって決まる。重要な温室効果気体である二酸化炭素の大気存在量は地表に固定される量と脱ガスによって供給される量との釣り合いによって決まる。これによって脱ガス量が多ければ温室効果は強まり、少なければ温室効果は弱まる。ところで脱ガス量及びその変遷は惑星の内部熱史によって決まる。そして熱史は惑星半径によって異なったものになる。これは惑星半径が大気温度の進化に影響を及ぼすことを示している。しかし大気温度の惑星半径依存性について言及した研究は少ない。
  そこで地表の液体の水が凍らないでいられる時間を求めることによって水が安定に存在できる条件を調べる。今回温室効果気体として考えている大気中の二酸化炭素は脱ガス量が低下することにより徐々に減っていく。そして脱ガス量の低下が地表温度に及ぼす影響は太陽の増光よりも大きいため地表温度は徐々に低下する。凍らないための具体的な基準温度として現在の地球の全球平均気温である15Cと比較のために5C及び標準温度25Cについて考える。これらの基準温度より温度が低下するまでの時間を『寿命』と呼ぶことにして、これを求める。簡単のために大気温度と地表温度とが等しいとした。熱史及び脱ガス量、炭素固定量、温室効果を簡単なモデルを用いてあらわし、数値的に解くことによって惑星半径と寿命の関係を求める。また惑星軌道半径と寿命の関係についても求める。
  以上の結果、寿命は惑星半径に線形に依存することがわかった。また入射エネルギー流量に対しては線形より強い依存性があることがわかった。これらの結果を用いると45億年間水が安定に存在できる惑星半径は火星程度の大きさ以上でなければならなかった。また火星半径で考えた場合、軌道半径は1.12AU以内でないといけなかった。今回用いたモデルは不確定性が大きい。例えば南北の温度分布や二酸化炭素分圧以外の温室効果も考えていない。 これらは今後の課題として残された。
(1)Tajika, E. and Matsui, T.(1990):The evolution of the terrestrial environments. In "Origin of the Earth"(Newsoms, M. E. and Jones. H. eds.), Oxford Univ. Press, pp.347-370
(2)Kasting, J. F., Whitmire, D. P., Reynolds, R. T.(1993):Habitable Zones around Main Sequence Stars, Icarus, 101, 108-128, 1993
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© 2003 日本惑星科学会
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