抄録
火星における表層質量荷重による真の極移動の永年変動についてモデル計算を行なった.この計算では,化石バルジが自転軸の安定性に与える効果だけでなく,極潮汐が自転軸の安定性に与える効果も考慮した.その結果,極潮汐を考慮した場合の極移動の永年変動は考慮しない場合と比べて幾分,様相が異なる事が分かった.この差異の程度は火星の内部粘性構造に依存する.その理由は,極潮汐による粘弾性変形の記憶が慣性能率テンソルの変動の履歴に残るからである.本研究の結果は,火星においてタルシスにより駆動される極移動に対して極潮汐が影響を及ぼす可能性を示唆する.