抄録
筋線維に活動電位がどのように伝導するかを調べる目的で正規化ピーク平均法による筋線維伝導速度(MFCV)の推定方法を提案した。等尺性肘屈曲運動中の健常者7人から表面電極列で得た全21対の筋電図から基準を満たした12対を研究に用いた。正規化ピーク平均法から算出した平均パルス波形のピークの時間遅れによる方法(P法)と平均パルス波形の相互相関による方法(CC法)でそれぞれ算出したMFCVを相互相関法(CCT)のMFCVと比較した。また,各運動単位によるMFCVの分布が偏る場合を調べるために計算機シミュレーションの手法を取入れた。その結果,P法はCCTより高いMFCV値となり,運動単位数がMFCV値の大きい方に偏る場合にこのような現象が起きることが分かった。これらのことより,本法はMFCVの算出だけでなくMFCV分布の推定や筋疲労の評価にも活用できる可能性も示唆された。