埼玉理学療法
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特集
研究と報告
  • ―PCLの影響を中心に―
    石井 亮, 石井 義則, 松田 芳和, 高橋 賢, 木賀 洋
    2005 年 12 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/29
    ジャーナル フリー
    人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty:以下TKA)において,術中の膝屈曲可動域が退院時の目標屈曲可動域を決定する一つの指標になり得るかを検討した。対象は変形性膝関節症によりTKAを施行した症例33例35関節(平均年齢72±8.2歳)とし,PCL温存群とPCL切除群に分類した。両群の術中麻酔下および退院時の膝屈曲可動域を測定し,その相関について調べた。術中麻酔下と退院時の膝屈曲可動域の間には,PCL切除群にのみ有意な相関が認められ,PCL温存群において相関は認められなかった。今回の結果からPCL切除群においては,術中の膝屈曲可動域は退院時の目標可動域を考える上で,一つの指標となり得ることが示唆された。一方,PCL温存群では,PCLの影響を考慮した後療法について検討していく必要性があると思われた。
  • 神原 孝子
    2005 年 12 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/29
    ジャーナル フリー
    気管切開術を施行された児(以下気管切開児)に対して,スピーキングバルブ(Passy-Muir valve以下SV)の使用を勧めているが,SVの装着において,呼吸困難感を訴えたりSVを呼気で飛ばしてしまう児がいる。今回,気管切開児のSV装着を困難にしている原因を検討する目的で,平成15年4月までに気管切開術を施行された17例(男児9例女児8例 年齢1歳~8歳)を対象に,1)胸郭の硬さ・変形・異常呼吸パターン,2)呼吸時の胸郭の周径差と腹部周径差,3)動脈血酸素飽和度,4)呼気ガスによりSV装着前と装着時のCO2測定(カプノグラフ付パルスオキシメータNPB75),5)安静呼吸において人工鼻装着時およびSV装着時の経気管内圧の測定(アナログ式圧力メータ)を行った。その結果,SVの装着可能時間は0秒~3時間とばらつきが見られた。呼吸パターンは腹式優位9例,胸式優位3例であった。異常呼吸パターンは,シーソー呼吸が5例,陥没呼吸が2例に,陥没呼吸とシーソー呼吸の合併が1例に見られた。胸郭変形は漏斗胸5例,樽状9例,扁平胸郭2例であった。胸郭の硬さは,ほぼ正常1例を除いて16例は硬かった。吸気呼気の胸郭の周径差0~1 cm,平均0.418 cm,吸気呼気の腹部の周径差0.2~1.2 cmであり,平均0.765 cmで腹式優位を示した。SaO2は91%以上14例(100~91%),77%1例,88%1例であった。呼気CO2は,SV装着による明らかなCO2の上昇はみられなかった。以上の結果からはSV装着の可否に明らかな傾向はみられなかった。SV装着時の経気管内圧は,10 cmH2O前後で安定している児7例,20 cmH2Oを超えている児4例,内圧が呼吸毎に高まってしまう児3例であった。この結果より,SVの装着を困難にする因子として最も重要なものは気道内圧と考えられたが,圧が高くてもSV装着可能な症例がいることから更に検討が必要と思われる。
  • 清宮 清美, 東保 薫, 里宇 明元
    2005 年 12 巻 1 号 p. 20-23
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/29
    ジャーナル フリー
    特別養護老人ホームには,常勤の医師やリハビリテーション(以下リハビリ)職員の配置が義務付けられていない。利用者は慢性期の重度高齢障害者が多く,積極的なリハビリ訓練は行われていないのが現状である。埼玉県では県立特別養護老人ホームにおいてリハビリ専門医による出張リハビリ診察と理学療法士・作業療法士の常勤配置で機能訓練の充実を図った。開設より6年間の利用者の変化を調査し,リハビリ的介入内容とあわせてその有効性について検討した。利用者の筋力,関節可動域,知的機能などの機能障害には大きな変化は認めなかったが,基本動作や日常生活自立度では機能維持・向上が認められた。今後,個々の利用者の状態を的確に把握して,必要なサービスを提供することの必要性はますます高くなっているといえる。特別養護老人ホームにおいても焦点を絞った適切なリハビリ介入が有効である可能性が示唆され,今後の利用者の要介護状態の改善および増悪予防のためのプログラムを検討していく必要がある。
  • 久保田 章仁, 植松 光俊, 西田 宗幹, 窓場 勝之, 高柳 清美, 井上 和久, 田口 孝行, 西原 賢, 細田 昌孝, 丸岡 弘, 磯 ...
    2005 年 12 巻 1 号 p. 24-32
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/29
    ジャーナル フリー
    平行棒支持2点1点揃え型免荷歩行で,口頭指示なしでの歩行(以下自由歩行)と口頭指示ありでの歩行(以下努力歩行)の2種類の歩行様式を設定し,いずれの歩行様式においても歩隔を広げると確実に免荷量が増加する,免荷量は自由歩行よりも努力歩行でより多い,という2つの仮説を立て検討した。高齢者では歩行に影響を及ぼすとされる膝伸展筋力についても測定し,免荷量との関係を検討した。健常成人女性10名(若年群)高齢女性8名(高齢群)を対象とした。結果,自由歩行と努力歩行において,いずれの歩隔においても,高齢群の免荷量が若年群の免荷量に比べ低値を示した。高齢群では歩隔を広げるほど免荷量は増加した。また,努力歩行の方が,自由歩行に比べ,両群ともに免荷量は増加した。このことから,歩隔を広げることや口頭指示は,高齢者の免荷量を増大させる一手段として有効であることが示唆された。
  • ―歩行時の下肢動作分析より―
    熊井 満喜, 柊 幸伸
    2005 年 12 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/29
    ジャーナル フリー
    臨床における理学療法評価の中の動作分析は,理学療法士の手と目による動作分析が主であり,技量と経験に依存している部分が多い。動作分析の客観的評価機器には3次元動作分析装置や床反力計等が用いられているが,価格,操作性,設置場所等の問題があり,臨床で広く普及するには至っていないのが現状である。近年,加速度や角速度が計測できる小型のセンサが容易に入手できるようになり,理学療法やその隣接領域でそれらセンサを用いた動作分析の試みがなされてきている1-3)。今回,我々は市販の3軸角速度センサとA/D変換器を用いた動作分析システムを使用する機会を得た。3軸角速度センサを大腿部,下腿部,足部の3カ所に装着し,トレッドミル上の歩行分析を試みた。下肢の各関節の運動が細部にわたって記録できており,運動方向と運動速度の関係から動作の分析が可能であった。比較的安価に作成することが出来た今回のシステムは,臨床での客観的な動作分析に有用であると考えた。また,コンパクトで動作を拘束することが少ないため,歩行分析だけでなく,あらゆる動作分析に応用可能なものであると考えた。
  • 木賀 洋, 石井 義則, 松田 芳和, 高橋 賢, 石井 亮
    2005 年 12 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/29
    ジャーナル フリー
    特に内科的な合併症がなくスポーツ活動中に膝蓋腱の皮下断裂を生じた症例の理学療法を担当した。手術は膝蓋骨にアンカースーチャーを使用し腱縫合を行い,半膜様筋腱を採取し膝蓋骨及び腱実部に通し断裂部を補強した。手術翌日より全荷重が許可され,6週より他動的関節可動域運動を開始した。初期の理学療法評価において,腫脹,膝蓋骨の低可動性,筋スパズムが膝関節の可動域制限の主たる問題点であると仮設をたて,治療を行った。術後12週では順調に可動域は回復してきたが,荷重位における筋力トレーニング(スクワット)で膝蓋骨の外上方付近に疼痛を訴えた。これに対し,内側広筋の筋機能不全による膝蓋骨の軌道変化が問題であるという再評価を加え,膝蓋大腿関節に関与する筋群の動的支持機構を考慮した治療を行ったところ,術後20週では正座,応用動作,軽いランニングが可能となるまで回復した。膝蓋腱断裂は稀な障害であるとされているが,中高年のスポーツにおいて受傷率の高いACL断裂に加え,障害予防の観点から見逃せない障害であると考える。
  • 佐藤 仁
    2005 年 12 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,脳卒中片麻痺者の麻痺側手掌面の感覚入力が,ストレッチングによって変化するか否かを明らかにすることである。対象は31名の脳卒中片麻痺者(平均年齢68.9歳)とした。方法は,麻痺側手掌面のストレッチングを施し,その前後の感覚を2点識別覚(2PD)で測定した。結果,ストレッチング施行後の2PD値が有意に減少を示し(p<0.05),ストレッチングが麻痺側の感覚入力向上に有効であった。これは痙縮に支配された麻痺側手掌面の皮膚や筋の状態が変化したことで,潜在能力が発揮され感覚入力が向上したと考えた。今後,片麻痺者の感覚障害に対する評価と治療の一助となることが示された。
  • 佐野 千絵, 工藤 昌弘, 中濱 正利, 佐野 勇介, 下村 景太, 佐野 芳一, 楢松 雅裕, 橋本 視法
    2005 年 12 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/29
    ジャーナル フリー
    当院では膝前十字靭帯断裂に対しての再建術として,平成12年6月よりDouble-Looped Semitendinosus and Gracilis Graft(以下DLSTG)移植術を採用している。リハは術前より介入し,術後翌日より全荷重許可,膝装具不要,14日以内の独歩獲得を基本方針とするプロトコールを作成した。プロトコールを実施し,術後4ヶ月以降膝の安定性および全可動域の獲得,大腿部筋力の患健比(健側の80%以上)の回復,競技に必要な能力の獲得が確認され次第主治医が許可し,早期スポーツ復帰が可能となった。
  • 西原 賢, 二見 俊郎, 久保田 章仁, 井上 和久, 田口 孝行, 丸岡 弘, 磯崎 弘司, 藤縄 理, 原 和彦, 高柳 清美, 溝呂木 ...
    2005 年 12 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/29
    ジャーナル フリー
    筋線維に活動電位がどのように伝導するかを調べる目的で正規化ピーク平均法による筋線維伝導速度(MFCV)の推定方法を提案した。等尺性肘屈曲運動中の健常者7人から表面電極列で得た全21対の筋電図から基準を満たした12対を研究に用いた。正規化ピーク平均法から算出した平均パルス波形のピークの時間遅れによる方法(P法)と平均パルス波形の相互相関による方法(CC法)でそれぞれ算出したMFCVを相互相関法(CCT)のMFCVと比較した。また,各運動単位によるMFCVの分布が偏る場合を調べるために計算機シミュレーションの手法を取入れた。その結果,P法はCCTより高いMFCV値となり,運動単位数がMFCV値の大きい方に偏る場合にこのような現象が起きることが分かった。これらのことより,本法はMFCVの算出だけでなくMFCV分布の推定や筋疲労の評価にも活用できる可能性も示唆された。
  • 丸谷 康平, 杉本 諭
    2005 年 12 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/29
    ジャーナル フリー
    老人保健施設に入所する脳卒中片麻痺患者を対象として歩行能力別に非自立群,屋内自立群,屋外自立群に分類し,歩行能力とBerg Balance Scaleの下位14項目および他の要因との関連性について重回帰分析を用いて検討した。その結果,歩行能力に強く影響を与える因子として「一回転」,「移乗」が選択された。以上より,上記2項目のような動的バランス能力の向上が,歩行能力の改善に有用であると示唆された。
  • 横山 浩康, 萩原 礼紀, 曷川 元
    2005 年 12 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/29
    ジャーナル フリー
    我々理学療法士が日々行う臨床業務の中で,関節可動域(以下ROM)測定は,高頻度で行われる評価である。従来のROM測定は測定結果をメモに残し,そのメモをカルテに記載するという繁雑な業務を伴う。また,測定時においての長時間の関節固定は,患者の負担増となっている現状である。実際に臨床業務においてのROM測定は,角度計を使用しない目測での測定が行われている場合や,角度読み取り時において角度計にぶれが生じ,角度を読み違えてしまう場合が多い。こうした問題点は測定・業務を正確かつ迅速に行えることが改善策の一つであると考える。そこで我々はROM測定において,1)Evidence Based Medicineに根ざした評価の正確性の向上,2)従来は業務負担となっていた記録方法の見直しによる業務効率の向上,を目的にElectoronic Goniometer(E-ゴニオ:パール光学工業社製)を開発した。これまで多施設間でのデータの蓄積を行い,報告を行ってきた。今回の実験では,理学療法士15名に対し,E-ゴニオと東大式鉄製角度計を用いて,膝関節模型および健常男性の左下肢のROM測定(足指を除く全下肢関節)を行い,評価の正確性・再現性および測定時間の比較を行った。結果,E-ゴニオは従来型角度計に比して正確性・再現性に優れた傾向にあり,測定時間についてはE-ゴニオが有意に減少した。本機の開発が,リハビリテーション施行時間の確保,および理学療法の効果向上に貢献できるものと考える。
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