日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第8回 日本予防理学療法学会学術大会
会議情報

地域実践活動3
地域在住要介護認定高齢者における身体活動量と睡眠状態の関連
水野 稔基井坂 昌明井ノ上 智美倉本 孝雄
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 139

詳細
抄録

【はじめに、目的】

要介護認定高齢者の身体活動量は、心身機能の改善および増悪の予防を行う上で重要な健康要素の1つである。そのため、身体活動量に関連する因子を把握するだけでなく、管理することも重要であると考えられている。これまで高齢者の身体活動量に関連する因子として、年齢や歩行能力などの身体機能が明らかにされている。その中で近年、睡眠時間や睡眠の質などの睡眠状態も身体活動量に関連する因子として着目されている。しかし、地域在住の要介護認定高齢者における身体活動量と睡眠状態との関連については、十分に検討されていない。そこで本研究は、要介護認定高齢者の身体活動量と睡眠状態との関連性を明らかにすることを目的とした。

【方式】

対象は、通所介護サービスを利用する要支援1~要介護3の認定を受けた65歳以上の高齢者45名(女性33名)、年齢83.2±4.4歳とした。選択基準は、屋内歩行が自立している者、本研究課題を理解できる認知能力のある者とした。身体活動量は、対象者の生活範囲から活動量を得点化し評価するLife-Space Assessment(以下LSA)(120点満点)を用い聴取した。睡眠状態は、睡眠時間の評価として総睡眠時間(就床から起床までの中で実際に眠っていた時間)を聴取し、また睡眠の質の評価として睡眠質問表(Pittsburg Sleep Quality Index: 以下PSQI)を用い、総合点(0~21点;点数が高い程不良)を算出した。その他、身体機能として歩行・バランス能力を反映するTimed up and go test(以下TUG)と握力を測定した。統計学的分析は、身体活動量(LSA)と基本属性、睡眠状態(睡眠時間、PSQI総合得点)、身体機能(TUG、握力)の関係についてPearsonおよびSpearmanの相関分析を用いた。さらに身体活動量(LSA)を従属変数、身体活動量と相関が認められた項目(睡眠時間、PSQI総合得点、TUG)を独立変数、年齢および性別を調整変数とした重回帰分析(強制投入法)を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。

【結果】

全対象者における身体活動量はLSA54.0±19.7点であった。睡眠状態に関しては総睡眠時間7.2±1.4時間、PSQI総合得点5.3±3.8点であった。また、身体機能はTUG13.7±6.9秒、握力17.5±6.1kgであった。

身体活動量と有意な相関が認められた項目は総睡眠時間(r=0.37)、PSQI総合得点(r=-0.58)、TUG(r=-0.32)であった。身体活動量を従属変数とし、重回帰分析を行った結果、PSQI総合得点(β=-0.53)、TUG(β=-0.40)が有意な項目として選択され、自由度調整済み決定係数(R 2 )は0.42であった。

【結論】

地域在住要介護認定高齢者の身体活動量と関連している因子は、TUGに加え、睡眠状態の中でも特に睡眠の質と関連している可能性が示唆された。そのため、要介護認定高齢者の身体活動量の向上を図るためには身体機能だけでなく睡眠状態も考慮した多面的なアプローチが要介護度の重度化予防に繋がる可能性がある。

【倫理的配慮、説明と同意】

本研究は、大阪行岡医療大学研究倫理委員会の承認(承認番号20-0002)を受け実施した。この研究の参加者には本研究の内容と目的及び個人情報の保護、結果の公表について十分説明を行い、同意を得て実施した。

著者関連情報
© 2022 日本予防理学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top